2020.05.05

ジャングルクルーズなSTAY HOME

新型コロナウイルス感染拡大防止による外出自粛のG.W。いかがお過ごしでしょうか?

私も極力どこへも出掛けないことにしておりますが、職場がなにしろ熱帯雨林気候のジャングルみたいな所で、作業員は私を含めて1~2名、換気も良い、というコロナウイルス対策としては好条件のため、普段とあまり変わらない生活を送っています。世の中は「STAY HOME!」と呼び掛けています。相手が植物という仕事柄G.Wはあまり関係がありませんが、ここが私にとって「STAY HOME」みたいなものです。外出自粛で自宅で過ごす機会の多い方にほんの少しでもジャングル気分が味わえるよう、今回はこの森を探検しましょう!

森の一角にはモンステラがひしめき合っています。原産地は熱帯アメリカ。モンステラはラテン語で「奇怪な」という意味からきているそうです。つる性の植物で現地ではヤシなどの樹木を這い上がって伸びて行きます。葉っぱに排水機能が付いていて、水を掛けたわけでもないのに水滴が付いていたりします。知らずにこの群落に突入すると服が結構濡れてしまいます。

見上げてみれば、ヤシの木が温室の天井付近まで伸びています。マダガスタル、アフリカ・インドの熱帯地方が原産のアレカヤシです。アレカヤシは生長力旺盛で、植えた鉢サイズいっぱいいっぱいまですぐに膨らみます。園芸の世界規模では限界を知らずに生長してゆくようです。普段はこの時期ハワイアンのイベントなどで引っ張りだこのアレカヤシも外出自粛でこの森でおとなしく、が、さらなる生長を遂げようとしています。温室の天井を突き抜けるのが先か、鉢を内側からぶち壊すのが先か。そんなふうに企んでいるようです。

アルテシマ・ゴムの木をカマキリ君が徘徊中です。最近「カマキリ農法」というものが注目されているようです。カマキリは植物自体は食べず、その植物に悪影響を与える害虫を食べてくれる、ということからです。それは無農薬にもつながります。このカマキリもゴムの木の害虫、できれば我々の害虫でもある蚊もガンガン狩って欲しいものです。でもこのカマキリ君の今日の雰囲気としては、遠出したいけれど、アレだから近所の散歩で我慢するか、といった感じです。

シマトネリコの小さな森を抜けると、これまた変な植物が存在感むき出しで現れました。熱帯アメリカ原産、セロームです。このサトイモ科に分類される仲間たちには樹液にシュウ酸カルシウムという物質が含まれていて、この樹液が皮膚に付着するとかゆみや炎症を引き起こす、と言われています。このシュウ酸カルシウム、原物そのものは日本では劇物に指定されていて深刻な消化器系障害を引き起こす、とか。「深刻な」という単語に恐怖を感じます。同じ仲間で「クワズイモ」というのもありますが、それもシュウ酸カルシウム。葉を触る程度は全く問題ありませんがけっして興味本位でも食べてはいけません。ここは素早く抜け出しましょう。

そして目の前には不思議な花が。

中国南部、台湾原産の「ピンポンの木」の花です。この時期、木の幹や茎から吹き出すように大量の花を咲かせます。夏になればピンポン玉くらいの実が付き、これは食べることができるらしいです!……ただこれはこれでアルカロイドなる物質が含まれているらしく、多量の摂取は危険とのこと。アルカロイドはカフェイン、ニコチンに始まり、アコニチン(トリカブトの猛毒)、テトロドトキシン(フグの猛毒)まで幅広くあります。ピンポンの木の実はどうなのでしょう?どうもはっきり分からないので、食べないに越したことはない、という結論に落ち着きます。

ホテイ竹の群生地を通りぬけます。日本でもおなじみの植物に会えると何だかほっとします。

観葉植物の代表「幸福の木」ドラセナ・マッサンゲアナの花を見つけました。

ベンジャミンの森では鳩が巣を作ろうとしています。ここには天敵もいないうえ、巣づくりに適した木がたくさんある!鳩はそう思ったのでしょう。やたらと鳩が近辺をうろうろしていると思ったら、こんなところにいました。これがもっと原色の赤や青の鳥だったら臨場感一杯だったのですが、ここは温帯気候・ニッポンでした。

この鮮やかな不思議模様の葉はストロマンテ・トリオスター。鳩でなく、こんな感じの鳥もいるべきです。名前も舌を噛みそうで異国情緒たっぷり。

今度はトカゲ君を発見。春を過ぎてすっかり暖かくなり元気に動き回っております。手の平がまあ、なんとも可愛らしい!「トカゲ農法」なんてのはあまり聞いたことないですが、トカゲもコオロギ、バッタ、蝶、蛾など観葉植物にも害を与える虫を好物としているので、このトカゲ君にもがんばってもらいましょう。カマキリ君に狩られないようにな。でもどっちが強いんだろう。

シュウ酸カルシウム、という印象の方が強くなってしまったセローム。こちらは背が高く気根も立派です。セロームの語源はギリシャ語で「木を愛する」だそうで、他の木に寄り添って生長する木ということに由来しています。周りになにもない、寄りかかる樹木のない環境では真っすぐに生長することはないようです。ここまで真っすぐなセロームもこうなるまで何かに寄りかかって(寄り掛からせて)生長してきたのでしょう。

夜になりました。植物の印象もがらっと変わります。パパイアの木は沖縄でもおなじみです。「パパイヤチャンプルー」という庶民料理があるくらい、果実は食用とされています。この木にもしっかり実が付いており、「青パパイア」のうちのほうがより栄養価が高いといわれています。その栄養価とは、アルカロイドとシュウ酸カルシ……っていやいやそんなものは入ってないようです。カロチン、ビタミン、カリウムが豊富だそうです。つい熱帯系には恐ろしいものが含まれてるって内心期待して調べてしまいます。夜になってようやっと「ちゃんと」食べられるモノに出会いました。…途中から少しコンセプトが変わってしまったようですが、当農場をぐるっとまわるジャングルクルーズ、本日は日没のためこれにて終了です!

(埼玉日高農園 サトウ)