2022.09.18
山奥でヒガンバナを見つけたら
この時期、周辺の山里ではヒガンバナが見頃になっています。
近くには巾着田というヒガンバナ群生超有名観光スポットもありますが、それよりも人知れず場所にポツンと咲いている一輪の花の方に惹かれる私は山里からそして山のなかへ入って行きました。
小さな集落の道端、田畑の脇、土手にはあちこちでヒガンバナが咲いています。
このヒガンバナ、秋のお彼岸の頃に花を咲かせることから名付けられました。
ただ、球根に強い毒を持つため、食べたら即彼岸行き、ということから名付けられたというブラックな説や、飢饉の際は毒を抜けば食べることできたことから「悲願の花」という意味も込められているという説もあるそうです。
別名は曼珠沙華(まんじゅしゃげ)。この不思議な音は古代インド語のサンスクリット語に由来しています。仏教で今でも使われる言語ですね。日本では地方名が100種以上あると言われていて、「葬式花」「墓花」「死人花」「家事花」などなんだか不吉なものばかりです。
これはどうやらヒガンバナが持つ強い毒性から来ているようで、こう名付けることで子供がいたずらに口に入れてしまうのを避けるためだと推測できます。
ヒガンバナを抜き取ると自分の家が火事になる、なんていう迷信も同じ理由ですね。
ではなぜこんな危険な花があちこちで咲いているのか、というとその強い毒性を人間が利用しているからです。田畑の脇に植えてネズミやモグラの侵入を防いでいたそうです。
そしてそれは土葬していた時代のお墓の周りでもその亡骸を荒らされないように植えられたそうです。
山里ではそんなふうにヒガンバナが今でも咲いています。
では山のなかは?
山のなかに「基本的には」ヒガンバナは咲いていない、ということがわかりました。
調べてみると興味深い事実。
なんと大昔中国大陸から日本に渡来したヒガンバナには遺伝子的に種を作れない品種なんだそうです。だからよくあるように種が風で飛ばされる、動物にくっついて運ばれる、というのができないんです。
だから全く別の場所に行くことが出来ない。
地中の球根の分球によってのみ繁殖するので、人の意思によってしか離れた場所に運ばれない。
では山の奥深くでヒガンバナを見つけたら?
深い、とても深いですね。
(埼玉日高農園、サトウ)