2020.10.18

ボタニカルアートな果実

園内で摩訶不思議なカタチの仏手柑が実りました! ぶっしゅかん、と読みます。ミカンの仲間です。ミカンはミカンですが中身は白いワタばかりで、ほとんど食べるところはありません! 実際には主にお正月飾りやフラワーアレンジメント、ディスプレイといった鑑賞用として利用します。なんとかして食べるならば皮ごと利用するマーマレードが美味なのだそうです。全国的に生産量はとても少ないのでなんとも贅沢なマーマレードになります。

さてさて今年は台風こそまだ直撃はしていませんが、速度の遅い台風の接近の影響もあってか、雨や曇り空がひたすら続く日々です。

それでも短かったとはいえ夏の強烈な日差しで熱帯系植物の生育は順調です。

雨降りの秋の夜長は読書です。前回シーボルトの話しを書きましたが、彼が日本で採集した植物図鑑「日本植物誌」を手に入れることができました!

見どころは今から約200年も前に描かれた植物画!これは今でもボタニカルアートの先駆者として高い評価を得ているそうです。植物の特徴がとても巧みに描かれているため、現代のカラー写真図鑑よりも分かりやすく印象に残ります。

そしてアジサイには「Hydrangea Otaksa(オタクサ)」と命名されていますが、これはシーボルトが来日してまもなく結ばれた「お滝さん」と呼ばれる女性の名前にちなんでいるそうです。それほどシーボルトは日本のアジサイに魅了されたのでしょう。

それにしてもシーボルトは仏手柑には出会えなかったのでしょうか?仏手柑は江戸時代にはすでに出回っていたそうですが、この本には掲載されていませんでした。シーボルトなら絶対食いつきそうです。当時の仏手柑の植物画も見てみたいものです。

シーボルトが食いつきそうな植物がもうひとつ!ハロウィーンに飾る植物として人気の「フォックス・フェイス」です。

初めて見た時は、これは一体なんなのだ?!と目がテンになってしまったのが私の第一印象です。このフォックス・フェイスはナスの仲間で、「ツノナス」「カナリヤナス」という和名があります。原産地は熱帯アメリカ。もちろんナス科の植物のように葉を広げ花を咲かせます。果実も最初は緑色で比較的長い時間をかけてこの鮮やかな黄色になるそうです。出荷時に葉もむしり取ってしまっているので、ハロウィーンの奇抜なイメージにより合うのでしょう。

フォックス・フェイスは日本では千葉県の南部のほうで盛んに生産が行われています。もし200年前から生産されていたら、シーボルトはこの植物にも虜になってしまうでしょう。

このフォックス・フェイスの黄色い実、注意しなくてはいけないのは食べられないことです。この果実には毒性の強いアルカロイド系のソラニンという成分が含まれています。ソラニンはじゃがいもの芽などにも含まれている物質で、食べると腹痛、胃腸障害、虚脱、めまい、眠気、下痢などの中毒症状が出るそうです。くれぐれも気を付けましょう!

ようやく晴れ間がのぞいてきました。少しは長い帯状の高気圧に覆われた晴天の日々が欲しいですね。

(埼玉日高農園 サトウ)