2021.01.17

長い年月をかけて育ったものから

冬場でも15度を下回らない当農場の大温室。日中は25度の夏日になります。観葉植物の多くは熱帯地方原産のため、できるだけ高温多湿な環境を再現させています。本日は全体の見回り。大きな葉を跨ぎかき分け、くぐり抜け、奥へ奥へ進んだところに注目している植物があります。それはなんと!

外の気温は昼間でも10度。北陸信越では大雪のようで、たまに雪を含んだような雲が流れてきます。

そんな重々しい季節でも鮮やかなシクラメンがお花屋さんにたくさん並んでいます。

このシクラメン、気が付いたらぐったりしおれて枯れてしまった、という方が意外と多いのではないでしょうか?たいていの原因は水枯れです。シクラメンは冬が活動期。思っているよりも多くの水が必要です。鉢底に水を貯められるタイプのものであれば水を切らさないように、水が抜ける普通のタイプの鉢であれば表面の土が乾いてきたらたっぷり水をあげるようにすると良いです。暖かい日であれば日中は日光に当て、夜間は雨や霜に当たらない軒下、外気温が5度以下になるような日は窓辺から離れた室内に置くと良いでしょう。

シクラメンは葉の一枚に一つの花が咲くと言われています。都内の軒下で昨年越冬させたシクラメンは葉だけのようですが、、

葉の下ではにょきにょき花芽が出てきています。案外丈夫な花です。

さて、話しは熱帯雨林の大温室に戻ります。注目しているのはこのバナナの木!花が咲き実がなりました。この圧倒的な存在感!まさにボタニカル・アート!

バナナは東南アジア、南太平洋原産で高さは数メートルの木になりますが、園芸学上では果物でなく野菜として分類されています。

根が地中に張りバナナの生産を目的とした熱帯の地域ではたわわに実がなりますが、この温室の小さな鉢の状態ではこれがせいぜいでしょうか。収穫するタイミングを見計らい中です。

興味深いのはバナナの花。花茎、と呼ばれるものが長く垂れていて、先端の赤い花のようなものは「苞」というものです。ポインセチアの赤い部分と同じく花を守るために存在し、本物の花は苞の中にあります。熱帯の生産地では「バナナハート」と呼ばれるこの苞も食用にしていて、他の野菜と共に炒めたりサラダにして食べているようです。

通常、出回っている「バナナの木」の鉢物は、幼木であったり品種改良のものであったりするため、こうして花が咲いて実がなることはほとんどありません。この熱帯雨林的な温室で長い年月をかけて成長したバナナの木がこのように花を咲かせ、実がなると(バナナの生産を目的としている訳ではないけれど)、うれしく思います。

(埼玉日高農園、サトウ)