2021.09.26
モンステラの壮大な計画
観葉植物はなんといってもその形の面白さに興味をひきます。写真のモンステラという植物は(特にこれだけの大きさになると)その面白さという点では抜群の存在感を放っています。「奇怪」を意味するラテン語がモンステラの語源となっているほどです。今日はこの「奇怪」モンステラについて書きたいと思います。
その前に当農場温室の現在の様子です。
この春に剪定した植木たちが夏の間に生長してきました。
観葉植物のほとんどは夏季は屋外で成長させるので温室内は空いています。とはいえあるレベルに達した植木は温室内に取り込んでいるので、その「空き」も実は「予約済み」なのです。
屋外で育った植木が入って来ました。植物は光量などの環境の急激な変化に対応しきれず、葉が黄色くなってしまうなどの傷みが出てしまう恐れがあります。屋外よりも若干光量の弱い温室で環境の変化に慣れさせてから、得意先へ納めます。
そしてモンステラも大きく育ってきました。
雨が降ったわけでもなく水をかけたわけでもないのに、朝方になるとよくモンステラの葉の淵が水滴が溜まっていることがあります。これは水孔といって水分の排出器官がモンステラの葉の淵にあるからです。うっかりモンステラの群落に入り込むと服がびしょ濡れになります。
モンステラは熱帯アメリカ、カリブ海東端の小アンチル諸島原産のサトイモ科のツル性の植物です。現地ではジャングルの地べたを這ったり大木の幹に絡み付いて成長します。日本でも太平洋南方の島々に自生しています。東京の近い所では伊豆大島でも見られ、八丈島まで南下すると島の森のなかに普通に茂っています。薄暗いジャングルのなか、というのがモンステラに適した環境です。直射日光に当てなくても育つので、建物のなかに置くには最適なグリーンのひとつです。モンステラは鉢植えでは根の絡みやすい太めの支柱を使って仕立てます。写真にある黒い支柱がそれで、モンステラはその支柱に絡み付きながら上へと育って行きます。
モンステラは支柱を使った仕立てだけでなく、太い幹そのものを自立させた鉢植えもあります。一般的に鉢植えからではモンステラの幹は太く育たないので、温室内で好き勝手に地べたを這って育った(育ってしまった?)ものを切り取って仕立て上げます。
これを立ち上がらせて鉢に植え込みます。これは3月後半に植え込みました。
2か月ほどで切断した部分から新芽がガツンと出てきました。元の茎が太いと新芽そのものも大きいです。
さらに2か月で新しい葉が展開しました。いきなり大きくて立派な葉です。こんな自立したモンステラのほうがより自由で奇怪で野性味あふれるモンステラになりますね。こういったモンステラを仕立てるために温室中全てにモンステラを這わせて太く太くさせて自立モンステラ専用農場にしてしまおうか、なんて思ってしまいます。そう、モンステラの花言葉は「壮大な計画」です。
モンステラは花も咲きます。他のサトイモ科と同じような花で、モンステラのそれはミズバショウのお化けみたいな感じ、と言えば想像しやすいでしょうか?花は鉢植えからではめったに咲くことはありません。充分に根を拡げられる地べたでないと花は咲きにくいそうです。そしてその果実も食べられるといいます。それはパイナップルとバナナを混ぜたような味、と表現されています。ちょっと興味がありますね。モンステラ壮大計画のふたつめはこれで行きましょう。フルーツ生産。そこでちょっと調べてみると、シュウ酸カルシウムが含まれているためよく完熟させてからでないと食べられない、また完熟させても口内が痛くなる恐れがある、とか。。。そのシュウ酸カルシウム、尿路結石を引き起こす劇物だそうで…。この計画はもうあっさりと「無し」です。観葉植物はまさしく葉を鑑賞するための植物である、と改めて思います。
前回のこのブログでも書いた通り、気温が落ち着いてきた今頃になってハイビスカスが元気よくその花を咲かせております。
もう夏も終わりですね。今年も暑い暑い夏でした。
(埼玉日高農園 サトウ)