2021.12.30

鑑賞用として遥か彼方からやって来たが

近所の空き地で見つけたこの真っ赤な実が連なる植物!

潜り込んで覗くと何かのイベント会場のごとく赤い「球」がそこらじゅうに浮遊していて非日常的な空間になっておりました。

 

さて、冬至を迎えました。これから日が少しずつ長くなってゆくと思うと嬉しく思います。

とはいえこれからが寒さの本番。主に熱帯原産の観葉植物にとって寒さは大敵です。

暖房機で暖められた空気がくまなく行き渡るようにダクトが温室中を巡っています。

秋まで屋外でたくさん咲かせていたハイビスカスも、このクリスマスまで大活躍だったポインセチアもここで越冬です。

 

 

そしてもうお正月。

シュロ竹は寒さに強いとされる代表的な観葉植物です。竹、と名前につきますが、ヤシの仲間です。

その歴史はとても古く日本では300年も前の江戸時代に中国から持ち込まれ親しまれてきた古典園芸植物です。

原産地は中国南部から東南アジアにかけて。「緑の宝石」として現地ではお正月に飾る縁起の良い植物としていまだに重宝されています。

また現代の日本でも「和」の演出や東南アジアの雰囲気を醸し出すグリーンとして根強い人気があります。

シュロ竹と同じく江戸時代に日本に渡って来て、お正月飾りとして定着した植物のひとつがハボタンです。

原産地はヨーロッパ。元は食用として持ち込まれました。

江戸時代のお正月は身分の高い人の屋敷などでは高価な牡丹を飾っていました。この牡丹に似ている比較的安価だったハボタンが一般庶民におおいにウケ、牡丹の代わりに飾られるようになったのが日本における起源と言われております。

お正月に飾る縁起の良い植物といえば、千両、万両、南天などの赤い実がなっているものでしょうか。

色彩に乏しい冬の景色において、この鮮やかで力強い赤色は富と繁栄を連想させるとして、重宝されてきました。

そして冒頭の空き地の赤い実です。

これはタマサンゴというナス科の常緑低木です。

原産地は南米で明治時代に鑑賞用として日本に渡来しました。

千両万両と同じようにお正月に縁起の良い植物として飾るのが狙いだったのでしょうか。この目論見は見事に外れてしまいます。タマサンゴは寒さに弱く、お正月の縁起物として定着できなかったようです。

しかしどの動植物と同じように百戦錬磨の「外来種」! 日本で野生化しました。

真っ赤な果実はたわわに実り、実自体はプチトマトのようです。ただしソラニンが多く含まれているため有害。お正月の縁起物としても定着してもらえず、考えてみるとけっこう可哀想な植物ですね。。

せめて物好きなワタシに拾われ、たまたまこのページに目を通してくれた方にその存在を知ってくれたら、タマサンゴ君としてはちょっとは嬉しいかなあ?なんて思いました。

(埼玉日高農園 サトウ)