2022.10.30
鬼に食べさせるべき実とは
実りの秋。
様々な樹木に立派な実を付ける季節となりました。
もうすぐ2歳になる息子を散歩に連れて行くと「カ・キ、カ・キ!」と叫びます。
柿の語源は「暁(あかつき)」「輝き」から来ているという説があるように、深緑色の葉っぱの茂みのなかからはひときわ目立って見えるのでしょう。
とある公園に行くと再び叫び声。
「カ・キ!カ・キ!!」あれは知ってるぜ、任せろ、といった感じに得意げです。
残念。これはザクロです。
見上げればたくさんのザクロの実。足元にもたくさんのザクロの実が落ちていましたが、虫に食べられてしまったのか果肉はほとんど原形を留めていませんでした。ザクロとはどんなものか?きちんと見せてやらないとな、と少し樹に登り枝を揺すって実を落として開いてみせます。
ぱかり。
「おおー」「オーー(息子の声。すぐ真似る)」
改めてこうして見ると、とても綺麗ですね~。宝石のガーネットをザクロ石というのもうなずけます。
この熟した果実に多数の赤い種子のザクロの実は子孫繁栄ととらえて、世界的にも子宝のシンボルとなっているそうです。
またザクロには興味深い伝説もあります。子供を食べる鬼にお釈迦様が人肉に似た味のザクロ(=果肉の強烈な赤に由来しているのでしょうか)を与えたところ、鬼はすっかり改心して子育ての神となった、という鬼子母神の伝説です。なるほど、公園の入口にザクロの木、というのは最高に理にかなっていますね。
「なるほど!」「ナルオロ~」
念のため私も食べておきましょう。甘酸っぱくて美味です!ただしザクロの実本体の皮にはペレチエリンという中毒成分が含まれているので、リンゴのように皮ごとかぶりつくのは禁物です。
さて、今度は大人の拳二つ分はある黄緑色の大きな実。
「……ミ!」
なんだかわからないと、とりあえずこう言います。これはカリンですね。カリンはカリン酒やシロップ漬け、のど飴に使用されていますが、生食は無理のようです。果肉は木のように硬い石細胞が多く含まれており、渋みが大変強いとか。ただとても芳醇な良い香りがします。
カリンにも先ほどのザクロのように「植える適地」みたいなものがあって、地域によって「金は貸すが、借りない(借りん)」という縁起をかついで庭に植える風習があるそうです。
近所の庭ではブドウの露地栽培。
「ブ・ド・オ!」
そう、正解。
そして後日、山歩きに連れて行きました。森のなかの斜面に粒々の実が成っている植物が。
「……ブドオ!ブドヲ!!」
いやいや、これはヤバいぞ。
これは
マムシグサ。
茎に見える部分のマダラ模様や立ち上がった苞の様子がマムシに似ていることから名付けられた。そしてマムシ同様に強力な毒性を持つ。マムシグサは全草に劇物指定であるシュウ酸カルシウムの針状結晶を含んでいる。誤って食すと口中から喉まで激痛に襲われ、唾すら飲み込めなくなる。下痢嘔吐心臓麻痺の症状が現れ、重篤な場合死亡する。
というオソロシイ植物です!
そのシュウ酸カルシウムの針状結晶、検索した写真を見ただけで、そのヤバさが伝わってくるほどの剣山です。
「これはいかんぞ!」「コレワ・イカンオ!!」
子供を食べる鬼にこのような劇物を食べさせなかったお釈迦様はさすがだなー、さらに復讐の鬼と化してしまうよなあ、山のなかで妙に感心してしまいました。
(埼玉日高農園、サトウ)