2022.11.27

そこでポインセチアは考えた

山でも街でも注意深く歩いていると(人によっては注意深く歩いていなくても)、アジサイの花を今でも見かけることがあります。これらは初夏に咲いたアジサイが気温の変化などによって可愛らしいパステル調の色彩が数ヶ月をかけてアンティーク調というべき色彩になったものです。これを「秋色紫陽花」と表現します。長い時間が必要な色彩はとても深みがあります。そしてもうひとつ思うのはその日本語が美しいなあと感じます。

秋が深まり紅葉もピークを迎えつつあります。それぞれが真っ赤にそして真っ黄色に色付きました。

気温、湿度、日照時間などの条件で緑色の色素を失うと、今までそれに隠されていた黄色の色素が現れます。それが黄色く紅葉する葉っぱです。

そして樹木の種類によって有害な紫外線の侵入を防ぐために、赤い色素を作り出します。これが赤く紅葉する葉っぱです。

先月このページで書いた「鬼子母神」のザクロの木は黄色に色付きました。

 

イチョウも黄色く色付いてきました。

街なかのイチョウは興味深いことに場所によって黄色だったり、まだ緑色だったりします。これは間近の街灯によって夜も光が照らされているため、本当の日照時間が分からなくなってしまっている木といわれており、なんだか可哀想な気がします。

 

そしてこの季節の真っ赤なお花といえばポインセチア!

これからクリスマスにかけて代表する花です。

とはいってもポインセチアの生まれ故郷はクリスマス文化発祥のヨーロッパでなく、なんとメキシコです。どちらかというと熱帯系の植物です。それがなぜクリスマスと合わさってしまったのか。それは19世紀前半にこの植物がアメリカに持ち込まれたときに12月の真っ赤なポインセチアを「キリストの血」と表現したのがきっかけなのだそうです。

この真っ赤な部分は実は「花びら」ではなくて花のガクが進化した「苞」と呼ばれるものです。ポインセチアの花はその中心の黄色っぽい部分です。すごく小さいです。小さな花の横にくっ付いている唇みたいなものは蜜腺といってここから甘い蜜を出します。

ポインセチアも「花」である以上、虫などに助けを借りる受粉が必要です。

しかし花が小さすぎるため虫が見過ごしてしまう。他の花に比べ相対的に大きい蜜腺を付けても見過ごされてしまう。

そこでポインセチアさんは考えました。

どんな虫でも気付くようにまわりを大々的に真っ赤にして花に見立ててしまおう!と。きっとそんなかんじに進化してきたのでしょう。人間が「キリストの血」と言われ、クリスマスの時期にもてはやされるほど赤く色付かせるようになりました。

ポインセチアはユーフォルビア属に分類されており、この仲間にはポインセチアとは全く似つかないまさにサボテンのような多肉植物や「世界一危険な木」とギネスで認定されるほどのマンチニールという樹木(中央アメリカ原産。猛毒のリンゴとも呼ばれ葉っぱから実までの全草において有毒。その毒は水にも溶けやすいため現地では「この木の下で雨宿りをしてはならない」と言われている)もあるほどです。

このユーフォルビアの特有の共通点は草食動物に食べられないように、と有毒の白い樹液を持っていることです。ポインセチアもこの白い樹液を持っています。毒性は弱い方ですが皮膚炎を起こす性質があるので気をつけましょう。

 

最後にポインセチアをご家庭で管理するコツです。

原産がメキシコということもあって、乾燥に強く太陽は大好きで、寒いのは苦手です。

ということをふまえて、水やりは極力控えめに、なるべく日差しが入る窓際に置くのがベストと言えます。また真冬は窓際では温度が低いので、夜は部屋の中央に置くなどのひと手間が長く楽しめるコツかも知れません。

 

(埼玉日高農園、サトウ)