2022.12.25

ソロモン王が選んだ花と馬主が選んだ花

農場から近くの山の森もすっかり葉が落ちてきました。もう冬です。

そんななかでも緑の葉を保ち赤い花を咲かせる木はひときわ目を引きます。

ツバキです。ツバキは常緑樹のなかでも常緑広葉樹の照葉樹に分類されこの寒さでも紅葉して落葉することなく年間を通して緑色を維持しています。

紅葉し落葉する樹木は冬の寒さのため、緑色の素である葉緑体が分解されてしまうのですが、ツバキの葉にはクチクラ層という丈夫な膜のようなものが発達しているため、それが葉緑体を保護しています。クチクラ層の主成分は蝋で葉の表面にテラテラ光沢があるのはそのせいです。このクチクラ層、英語でキューティクルと言います。美容の宣伝でなじみのある言葉ですね。髪の毛の美しいツヤをキューティクルと表現したりしていますが、まさにそれです! クチクラ層は生物の毛の表面にも存在していて、それが寒さ乾燥紫外線から守っているのです。

 

ツバキは日本原産の樹木で、17世紀にヨーロッパに伝わり大流行しました。ヨーロッパで常緑な樹木といえば地中海地方のオリーブなどの銀葉系のものが主で、ツバキのように光沢のある濃い緑でしかも冬に赤い大輪を咲かせる珍しさから人気になったようです。

日本でも古くから屋敷に植えられたり地域ごとに独特な品種が栽培されてきました。ただ幕末の頃には花ごと落ちるツバキの花を「首が落ちる」と連想し武士が屋敷に植えることを嫌っていた地域もあったそうです。

またその「花ごと落ちる」を「落馬」と連想して競馬の世界では「ツバキ」を使った名は現在でもほとんど付けられない、という興味深い事もあります(実際最高峰のレースのひとつである日本ダービーで「ツバキ」という名の付いた大本命馬が落馬してしまった事があったそうです!)。

ちなみに花びらが1枚1枚落ちるのがサザンカです。

 

さてさて街なかではシクラメンの花が多く目立ってきました。

冬のこの数少ない花の時期、シクラメンの赤や紫の鮮やかさは強烈です。

シクラメンはツバキとは逆にヨーロッパから伝わりました。ギリシャからアフリカ・チュニジアにかけての地中海沿岸が原産地です。

シクラメンという名前は球根の形や花茎が螺旋状になる性質から「円」を意味する古典ギリシャ語に由来しているそうです。

 

シクラメンの花はよく見ると下向きに咲いていて、花びらは上に反り返っています。

どうして下に向いているのでしょうか?

原産地の地中海地方は冬が雨季となります。花が上向きだと花粉が雨で濡れてしまうためシクラメンは下向きに咲かせることになったのだそうです。

ただ興味深いのはもうひとつの説。

時は紀元前1000年頃、古代イスラエルのソロモン王が王冠にシクラメンの花のデザインを取り入れるとシクラメンは恥ずかしくなりうつむいてしまって今ある姿になった、というこの地域ならではの神話があります。

 

最後にシクラメンの最適な育て方を紹介します。

日当たりが大好き。高温低温多湿が苦手です。

出来るだけ日当たりの良い室内で高温になりすぎない場所で朝晩に冷え込みすぎる所は避けて下さい。10℃~20℃でキープできると良いです。水も受け皿などに浸し放しにするのは避けましょう。

晴天率が高く温度変化が少なく乾燥気味の地中海地方の環境をイメージ出来ればそれが最適です!

 

(埼玉日高農園、サトウ)