2023.03.26
コウモリ、キツネザル、チンパンジー
春の大雨の休日、2歳の息子を歩きまわすのにちょうど良いかも、と思い立って東京の湾岸にある熱帯植物園に行きました。
「ハッパ!」「タキ!」さっそく知っている単語を叫び興奮気味。
そして私も職業柄「あのモンステラすげぇ!」と興奮気味。
道端にはコエビソウが咲き乱れていました。
名前の通り小海老そっくり。お寿司のネタそのもので美味しそうに見えなくもないです。
本物の花はその先端から下向きに咲いています。
まだ2歳の息子は当然お寿司には興味を持っていないので、そこまで感心を示さずにずんずん行ってしまいます。
ゾウタケがありました。世界最大の竹で、高さは30メートルに達するそうです。根元も迫力があります。いくつか切った形跡があるのは、この植物園の天井ドームを突き破りそうになったからでしょうか。
道は滝の裏側を歩けるようになっていて、息子はここで立ち止まり微動だにしなくなりました。多量の水が落下しているのを興味深く眺めています。
これをチャンスに付近の観察です。
モンステラの気根。
レッドジンジャー。
ショウジョウヤシの幹。ヤシのなかでは最も美しいと言われており、観葉植物としても出回ってはいますが、なかなか手に入らず滅多にお目にかかれないレア物です。この赤い幹が抜群の存在感を放っています。
ようやく動き出した息子はショウジョウヤシなぞスルーして階段を不器用に上り、今度は沢が流れているポイントで立ち止まりました。再び水の流れをずっと見つつ、さらには手でぱしゃぱしゃ始めました。これはしばらく動かないぞ。
再びチャンス到来。
ネオレゲリア。
アカタコノキ。
カラテアの花。
バショウの花。
水の流れに見飽きると、危なげなく降りられるようになった階段をテコテコ一人で勝手に進んで行きます。
ナンダコレと葉っぱを撫でまわします。面白そうな葉っぱを見つけたネ。
そしてヒスイカズラに出会いました!
ヒスイカズラはフィリピンのルソン島などが原産のつる性植物で花期に翡翠色の花弁を付けます。開花はわずか数日で終わり今では絶滅危惧種に指定されている貴重な植物です。
この色とともに興味深いのがこの花粉を運ぶ役目を担っているもの。それは虫でも鳥でも風でもなくコウモリであること!ヒスイカズラはコウモリに蜜を吸いに来てくれるようにぶら下がりやすい花の形になり、そしてコウモリの好む色になったと言われています。
息子も翡翠色の花が珍しいのか、それとは全く違う何かに興味を持ったのかしばらく上を見上げています(たぶん後者です)。
「デン・チュー・ガ・アルネ!」
息子が電柱だと指さした物はダイオウヤシの幹です。確かに電柱です。最大級のこのヤシは高さが25メートルを超えるものもあり、この植物園でも天井ドームに届いてしまったためやむなく伐採せざるを得なかった木もあったそうです。
タビビトノキの葉茎の造形はとても魅了されます。
タビビトノキはマダガスカル原産。この植物の花の受粉を媒介するのはなんとサルです。
エリマキキツネザル、というサルによってのみ受粉の媒介が行われており、タビビトノキはそのサルが好む蜜を作り、サルはその蜜を吸い易いように顔の形を変えて進化して来ました。お互いが長い時間をかけての共進化の歴史がある点には興味を引きます。ただこのエリマキキツネザル、絶滅の恐れもあるそうで、もしそうなってしまったらタビビトノキも繁殖できなくなります。自然界は本当に絶妙なバランスで成り立っているのですね。
さて息子は息子でチンパンジーのようにぴょこぴょこ飛び跳ね、走りながら園内3往復めに突入しました。おそらく絶妙なバランスで元気なだけです。帰りは電車に乗ったら/あるいはここを出たらすぐに眠りに落ちるでしょう。
(埼玉日高農園、サトウ)