2023.04.30
本当だった伝説
都心平野部では桜は完全に新緑に覆われてしまった4月の半ば、ソメイヨシノよりも開花が遅いヤマザクラを求めて秩父の山を歩いて来ました。
山の登山道に入ってから1時間。足元には濃いピンクの花びら。見上げるとはるか頭上にかろうじて咲き残っているヤマザクラを見つけました!
例年より暑い暑い春の気温のあかげで山の桜もほぼほぼ咲き終わり散ってしまっています。
ヤマザクラは日本の山地に自生するサクラの代表樹種で、明治時代にソメイヨシノが主流になるまでは花見といえばこのヤマザクラだったそうです。
ヤマザクラはソメイヨシノと違って花の開花と同時に赤茶けたが葉の新芽も吹いて来るのが特徴です。
そして「ジュウニヒトエ」という花も発見!
その名前の通り平安時代の宮廷女官の衣装「十二単」に由来しています。
どんなきらびやかな花か、と思わせる花ですが、実際は単色で地味です……。ただ冬を越してこれまで色彩に乏しかった世界においては、十二分に目立つ春の山の花ではあります。
「リンドウ」も見つけました!
リンドウといえば秋のイメージですが春咲きのリンドウもあり、「ハルリンドウ」と呼ばれています。
リンドウは漢字で書くと「竜胆」。
漢方の世界において熊の胆汁を乾燥させた生薬に匹敵するほどの効能があり、なかでも最上級を意味する「竜」の文字を加えて「竜胆」と名付けられました。リンドウの根の成分が胃腸に効果があるそうですが、それは笑いも止まってしまうほど苦いため、笑止草(えやみぐさ)という別名もあります。
山のなかの陽だまりに咲くハルリンドウを見つけると「ジュウニヒトエ」よりもずっとキラキラとしていて、思わずニヤニヤしてしまう私にはその苦さはちょうどいいかも知れません。
そしてついに「最強の生薬」も発見!
春はおもしろいです。
それはこのイカリソウ!
これまた地味なかんじですが、まずはこの花の「伝説」から。
中国大陸の野生の羊がこの花の葉を食べたところ、一日に百回交尾をするほど精力絶倫になった、という伝説があります。
そんなことから花言葉はなんと
「あなたを離さない」。
この花の別名は「ヨメトリグサ」。
……なんだか凄いです。
その伝説から中国では淫羊霍(インヨウカク)呼ばれ、勃起不全に効果があるとかないとか……。
この花の葉の成分が分析されるようになると、実際に血流が強く増す作用が認められ、バイアグラと共通の効果があり、生薬で精力剤として名を広めたそうです。伝説は本物だったのですね。
そしてさらにその伝説は生き続けているように、日本の有名な滋養強壮ドリンクにもそのイカリソウが配合されているのでした。ちょっとオドロキです。
↑コレです。
春の山を少し歩くだけで興味深いものに出会いました!
本当におもしろいものです。
(埼玉日高農園、サトウ)