2023.10.22
キンモクセイの事実
日中はまだ暑い日もありますが朝晩はきちんと気温が下がるようになり、ようやく秋らしくなってきました。
出勤時に家のドアを開けると、外からふわりと甘い香りが漂って来ます。ああ、この季節だなと感じる瞬間。
それはキンモクセイです。
キンモクセイは中国が原産地とされ、樹皮が動物「サイ」の皮に似ている事から「木犀」と名付けられ、その仲間のうちオレンジ色の花を付けるものを「金木犀」と呼ばれるようになりました。
キンモクセイの特徴はなんといっても遠く離れていてもわかるあの甘い香り。
その香りにも秘密があります!
キンモクセイは虫が花粉を運ぶ虫媒花ですが、昆虫なら何でもオーケー、どんな虫でも蜜を吸いに来て花粉を運んでください!というわけではないようです。
例えば蝶。蝶は長いストローのような口で離れた所から蜜を吸ってしまうため、身体に充分な花粉が付きません。蜜をあげているのに花粉を運んでくれない……。言ってみれば無銭飲食です。
出来れば花の咲く時期に多いハチ・アブ・ハエに来てもらいたい……。そこでキンモクセイはハチ・アブ・ハエが好み、蝶には嫌がる匂いを作りました。
これがキンモクセイの香りの正体です!
キンモクセイはトイレの芳香剤として広く利用されていますが、実はハエも大好きな匂い、という事実は少しおもしろい話ですね。
そしてキンモクセイの驚愕するもうひとつの話。
キンモクセイは日本には観賞用として室町時代から江戸時にかけて中国から持ち込まれました。
キンモクセイは雄と雌がある雌雄異株ですが、花付きの良い雄株だけ持ち込まれたそうです。
そして、その雄株は挿し木で増やしやすい事から、今現在に至るまでキンモクセイは挿し木・取り木によってのみ増殖して来ました。
そんな経緯から日本にはなんとキンモクセイの雌株が存在していないといわれています!
だから日本ではキンモクセイの果実は見る事ができません。。
また近年の調査ではこの日本のキンモクセイの起源となる中国の同種には同じ遺伝子を持っていない(または見つかっていない)ことが判明し、日本のキンモクセイの起源は実は日本国内ではないか、という説も有力になっているそうです。
ただこちらの場合も花付きの良い雄株をくり返しくり返し挿し木で栽培されてきた結果、それに対応した雌株が存在しなくなってしまったようです。
女性のいない世界。
しかも男性(雄株)は子孫繁栄のためたくさんの花を毎年咲かせています。
それはとても健気でありなんだか切なくもある話ですね。
秋が深まった気がします。
(埼玉日高農園、サトウ)